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原子力機構の廃止措置、対象作業で工期20%短縮 もんじゅ・人形峠に残る課題

原子力機構の廃止措置、対象作業で工期20%短縮 もんじゅ・人形峠に残る課題

はじめに

原子力施設の廃止措置は、設備を解体して終わる作業ではありません。解体で発生する廃棄物を分別・処理し、廃棄体化や最終的な埋設処分まで見通して進める必要があります。
2026年7月10日に開かれた文部科学省の「原子力バックエンド作業部会(第12回)」では、日本原子力研究開発機構(JAEA)から、廃止措置の実績や技術開発の状況が報告されました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.1)。
中小規模施設では、複数年契約を活用した対象作業で工期や費用を削減。一方、もんじゅのナトリウム搬出や、人形峠環境技術センターに保管されている六フッ化ウラン(UF6)の譲渡など、制度面・技術面で調整が必要な課題も残されています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.2)。
本記事では、同会合で示されたJAEAのバックエンド対策の進捗と課題を整理します。

廃止措置、廃棄物処理、埋設処分を一体で進める

JAEAは、バックエンド対策を次の3分野で構成しています。
  • 施設の廃止措置
  • 放射性廃棄物の処理・廃棄体化
  • 最終的な埋設処分
廃止措置では、施設の解体や設備の撤去を進めます。しかし、作業に伴って放射性廃棄物が発生するため、保管や処理、最終処分まで含めた計画が欠かせません(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.2)。
対象施設は、施設が抱えるリスクや維持管理費などを考慮して優先順位を付けて選定されています。廃止措置や廃棄物処理を効率化するため、現場の課題と、JAEAが保有する技術を結び付けた研究開発も進められています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.2)。

中小規模の14施設で廃止措置

2025年度には、中小規模の14施設で廃止措置を実施しました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.3)。
このうち、複数年契約を活用した対象作業について、JAEAは次の効果を説明しています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.4)。
  • 工期:約1,300日短縮、約20%短縮
  • 費用:16億円削減、約30%削減
これらは、廃止措置全体ではなく、複数年契約を活用した対象作業についての実績です。
単年度契約では、年度ごとに契約手続きや成果の引き継ぎが発生します。複数年契約に移行することで、契約の切り替えに伴う作業期間のロスを抑え、実際の廃止措置に充てる期間を確保しやすくなります。
また、従来から廃止措置に関わっていた4社に加え、さらに4社が作業に参入しました。新たに参入した企業は、JAEAとまったく関係のなかった企業ではなく、これまで管理区域内の一般作業などに関わっていた企業が中心とされています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.4)。

グローブボックスや埋設配管を解体

廃止措置の現場では、放射性物質や核燃料物質を扱ってきたグローブボックス、配管、建屋内の設備などが解体対象になります(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.5)。

プルトニウム研究1棟

2025年度は、グローブボックス6基や排気配管などを解体・撤去しました。建屋の天井部に吹き付けられていたアスベストも撤去されています。2026年度は、床に埋設された配管などの撤去を進める予定です(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.5)。

再処理特別研究棟

建屋間の排水管や、ホットケーブのライニングを解体・撤去しました。地下に埋設された排水管を撤去した後、掘削箇所を埋め戻す作業も行われています。今後は、廃液の長期貯蔵施設内にある壁貫通配管などの解体・撤去を進めます(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.5)。

プルトニウム燃料第二開発室

MOX燃料製造用グローブボックス9基のうち、3基の解体・撤去を終えました。今後も、MOX燃料製造用や分析用のグローブボックスを対象に作業を進めます(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.6)。

燃料研究棟

グローブボックス内部の機器を解体・撤去し、内面の除染を行いました。グローブボックス4基の解体・撤去も完了しています。今後は、グローブボックスやフードの内部機器の撤去・除染に加え、複数のグローブボックスとフードの解体を進める予定です(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.6)。

廃棄物を減らすNRとクリアランス

廃止措置が進むほど、設備や建材などの廃棄物が発生します。そのため、放射性廃棄物でない廃棄物(NR)や、クリアランス制度を活用した分別が重要になります(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.8)。
NRは、放射性廃棄物として扱わない廃棄物です。一方、クリアランスは、放射能濃度が基準以下であることを確認した物を、法令上の放射性物質として扱わず、再利用などにつなげる制度です。両者は関連しますが、同じ仕組みではありません。
JAEAでは、プルトニウム燃料第二開発室の設備撤去などを通じて、200リットルドラム缶約1,000本分を、放射性廃棄物でない廃棄物として搬出しました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.8)。
放射性廃棄物については、減容処理を進めながら、将来の埋設処分を見据えた廃棄体化の基準整備を進めています。廃棄体の製作基準を、埋設施設の受入基準と整合させることが今後の課題です(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.2)。

自動点検や廃棄物収納の最適化を研究

JAEAは、2023年8月に「バックエンド技術開発戦略ロードマップ」を公開しました。ロードマップに基づき、JAEA内で開発した技術のシーズと、現場のニーズを組み合わせ、9テーマの技術開発を進めています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.10)。
2025年度までに、短期的に終了する予定だった5テーマが終了しました。そのうち、外部評価の高かった2テーマについては、改良・高度化を続けています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.10)。

保管廃棄物の自動点検

廃棄物を保管するエリアを、自走式ロボットで点検する技術です。ロボットを遠隔操作し、カメラ映像をローカルサーバーに取り込むことで、点検作業の自動化を検証しました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.11)。
現在は4人程度で行っている点検作業を、2人程度に削減できる見通しが示されています。今後は、画像診断による異常検知の精度向上や、複数拠点への展開が課題です。

廃棄物の分割・収納方法の最適化

タンクなどの大型設備をどの位置で切断し、どのように容器へ収納するかを、3D-CADや遺伝的アルゴリズムを用いて最適化する技術です。
ふげんでの検討では、廃棄物容器の発生数を約30%低減できる見通しが得られました。今後は、切断や収納の効率だけでなく、廃棄物の表面線量率も考慮した条件設定を検討します(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.12)。
なお、現在の技術開発は、解体物を効率的に収納することが中心です。レーザーや機械による切断、切断物の把持、落下防止など、実際の解体作業全体との連携は今後の高度化課題とされています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.12)。

配管内部の汚染測定

福島の環境回復・モニタリング向けに開発された技術を、バックエンド分野に応用する取り組みも紹介されました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.13)。
プラスチックシンチレーションファイバーを細い配管に挿入し、配管内部の汚染を測定します。従来は配管を半分に割って内部を測定する作業が必要でしたが、この技術によって、配管を切断せずにクリアランス測定を行える可能性があります。

知識継承と人材育成も課題

廃止措置では、現場で得られた作業手順や判断、設備ごとの特徴を、次の施設や次世代へ引き継ぐ必要があります。
JAEAでは、プルトニウム研究1棟や再処理特別研究棟の作業を動画で記録し、イントラネットに掲載しています。アスベスト撤去のように、古い施設に特有の作業を映像で残すことが、知識継承に役立つとしています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.9)。
一方、情報を蓄積するだけでは十分ではありません。将来、必要な情報を検索しやすいデータベースにすることが課題です。
また、物量から作業人工数や費用を算出するコスト評価システム「DECOST」についても、現場データを反映して精度を高める取り組みが進められています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.9)。
人材面では、若手向けの廃止措置講座や施設見学会を開催しています。プロジェクトマネジメント関連の資格取得も奨励されており、将来のバックエンド事業を担う人材の育成を進めています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.9)。

もんじゅは燃料取り出しとナトリウム処理が焦点

もんじゅでは、原子炉と炉外燃料貯蔵槽にあった530体の燃料が、燃料池で保管されています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.14)。
しゃへい体などの取り出し作業では、燃料交換装置の不具合により、約1年の遅延見通しが示されました。その後、装置を復旧し、ナトリウム中で正常に動作することを確認して作業を再開しています。2026年4~5月には164体、定期事業者検査時に2体、計166体のしゃへい体などを取り出しました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.14)。
水・蒸気系などの発電設備は、2023年7月から解体・撤去が進められています。蒸気タービンや発電機など、放射性規制の対象とならない設備については、有価物として売却・リサイクルする方針です(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.15)。
一方、もんじゅの廃止措置で大きな課題となっているのが、化学的に活性なナトリウムです。
2次メンテナンス冷却系では、残留ナトリウムの安定化処理を行ったうえで解体を進めています。小規模な設備で得られた知見を、将来の大規模なナトリウム機器の解体に反映する考えです(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.15)。
ナトリウムの搬出については、国内に受託処理施設がないことなどから、英国の事業者へ引き渡し、英国で水酸化処理したうえで工業用の中和剤などに活用する計画が示されています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.14)。
ただし、制度面の課題が残ります。英国ではナトリウムが有害廃棄物とされ、日本では非放射性ナトリウムが産業廃棄物、放射性ナトリウムが放射性廃棄物として扱われます。
さらに、会議では、放射性ナトリウムは現行法令上そのまま輸出できないと説明されました。搬出を実現するには、日本と英国の法令上の取り扱いを踏まえた調整が必要です(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.14)。

人形峠ではUF6の譲渡を優先

人形峠環境技術センターは1957年に開所し、ウラン探鉱・採鉱、製錬・転換、ウラン濃縮など、核燃料サイクルのフロントエンドに関する研究開発を担ってきました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.1)。
現在は、ウラン濃縮原型プラント、製錬転換施設、濃縮工学施設などで廃止措置が進められています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.1)。
人形峠では、施設に保管されている六フッ化ウラン(UF6)の譲渡を優先しています。UF6は、ウラン濃縮などで扱われる化合物です。
UF6については、酸化物へ安定化処理して保管する方法と、UF6のまま他の原子力事業者へ譲渡する方法が検討されました。その結果、実現可能性や経済性を踏まえ、譲渡を進める方針となりました。
譲渡に必要な設備を設置するスペースを確保するため、既存設備の解体も行われています。一方で、新たな解体を進めるよりも、UF6の詰め替えや搬出準備を優先する考えが示されました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.3)。
廃止措置計画の変更申請は2025年9月に行われ、会議開催時点では審査中でした。譲渡先や実施時期の詳細は、今回の会議録では明らかにされていません(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.3)。

クリアランスしたアルミニウムを施設内で活用

人形峠では、使用済み遠心分離機の解体、ウランの除去、除染を進めています。除染後の物については、放射能濃度を確認し、クリアランスを実施しています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.2)。
クリアランス対象は607トンで、主にアルミニウムです。2024年度末までに、10回、計77トンについて放射能濃度の確認を受けました(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.2)。
確認を受けた物の一部は、人形峠の施設内で活用されています。具体的には、東屋の補強材や花壇などに利用されています。ただし、現状では事業所内での利用・保管が中心です。
アルミニウムを施設外でどのように再利用するか、地域や全国で利用を広げられるかは、今後の検討課題となっています。

少量の核燃料物質を安定化する研究

大学や研究機関には、長年の研究活動によって生じた、由来や組成が明確でない少量の核燃料物質が残されています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.1)。
施設の老朽化や管理担当者の退職などにより、これらを安全に長期保管できる状態へ移行することが求められています。
原子力システム研究開発事業では、7大学の研究者らの課題認識を背景に、少量の核燃料物質を安定化する処理技術の体系化が進められています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.1)。
主な研究内容は次のとおりです。
研究では、単に物質を安定化するだけでなく、将来の廃棄体化や埋設処分との整合性も重視されています。安定化できても、その後の固化や廃棄体化に適さなければ、処分までつながらないためです。
研究成果は、安定化処理の基本フローをまとめた技術報告書として公開される予定です。
ただし、技術報告書やマニュアルを作るだけでは、十分な設備や専門人材を持たない事業所が実際に処理できない可能性があります。研究終了後の継続支援、専門家の派遣、共同処理の仕組み、民間企業の参画などが今後の論点になります。

まとめ

今回の作業部会では、JAEAが複数の施設で廃止措置を進め、複数年契約や技術開発によって作業の効率化を図っていることが示されました。
複数年契約を活用した対象作業では、工期を約1,300日、約20%短縮し、費用を16億円、約30%削減したとJAEAは説明しています。ロボットによる廃棄物点検や、廃棄物容器の発生数を抑える収納最適化など、現場への実装を目指す技術開発も進んでいます(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.4、原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.11、原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.12)。
一方で、廃止措置は設備の解体だけでは完了しません。発生した廃棄物を分別・処理し、廃棄体化して埋設処分につなげる仕組みが必要です。
もんじゅでは、ナトリウムの搬出に向けて英国での処理・再利用が計画されていますが、放射性ナトリウムの輸出をめぐる制度上の調整が残されています。人形峠では、UF6の譲渡によるリスク低減と、アルミニウムのクリアランス・再利用が進められています(原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.14、原子力科学技術委員会 原子力バックエンド作業部会(第12回) 議事録-p.2)。
さらに、大学や研究機関に残る少量の核燃料物質については、安定化技術の開発だけでなく、専門人材や設備を持たない事業所を支援する仕組みも求められています。
今後のバックエンド対策では、次の3点を一体で進めることが重要です。
  • 技術:安全で効率的な解体、測定、廃棄物処理
  • 制度:廃棄体化、埋設、海外搬出、クリアランスに関するルール
  • 人材・体制:知識継承、専門人材、民間企業、継続的な予算
廃止措置を「設備の解体」で終わらせず、廃棄物の処分や将来の管理まで見通した仕組みとして構築できるかが、今後の大きな課題となります。
【参考資料】文部科学省「原子力バックエンド作業部会(第12回)議事録」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/099/gijiroku/1422848_260710_00002.html)

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